最期の時間を君と共に
一目惚れ、とは言わないけれど、なにかしら予兆はあったんだ。それに気付いていないふりをしたのは私。気付いたときには、もう珀はゆずきが好きなんだと確信したときだった。
ここで珀とのはじまりを話してしまったら、珀は気付く。そこまで珀は鈍くない。だから、まだ言えない。もう少し先のお話。
きっと珀は、今日、ゆずきを呼んで告白した。いや、絶対そうだ。それで振られたのだろう。その後に私が告白だなんて無理だ。きっと珀は私を振る。そして、優しい珀のことだから、気に病んでしまうだろう。ここまで想像できてしまう。だから、まだ、まだ。まだ、心のうちに秘めておくよ。誰にも言えない、私だけが知っている恋。

「……ほら、部活行かなくちゃ。さすがに怒られちゃうよ」

「……しょうがない。また聞くからな、話」

「はいはい、話しますよ」

いつか、ね。

「じゃあね」

「またな」

お互い行く場所が反対なので、背を向けて走り出す。

「遥!」

急に私の名が呼ばれた。

「ありがとうな。遥がいてくれてよかった」

「……珀が元気になってくれてよかった」

涙が出そうだ。最愛の人が、小さな言葉かもしれないけれど、私のいる意味を教えてくれたから。私の紡いだ言葉が、全てが、最愛の人を救えた。涙を必死に堪えて、口角を上げて、笑った。
頑張れ、前に進め、最愛の人よ――。
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