最期の時間を君と共に
母さんは楽しそうに笑っているが、父さんはさすがに疲れたようで笑う気力も残っていないようだ。

「……またな」

俺に対する返事はもちろんなく、寂しさだけが心に残ってしまった。

「風呂入るわ」

風呂に入ったって形だけしか温まらないが、それだけでもいい。とりあえず温まりたい。

「分かったわー。お風呂沸かすから、沸いたら言うわね」

母さんの言葉に頷いてから、自分の部屋に向かう。

「……あいつ……」

ゴミ箱を見やると、大量の画用紙の切れっぱしが。どんだけ使ったんだよ……。でも、自分の頬が緩んでいることなんて分かりきっている。俺たちのために“ゆずきが”作ってくれた証だから。
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