最期の時間を君と共に
「……私も、大切な人にプレゼントを渡したいと思ったことがあるんです。本当にお世話になった方でしたから……。いい物をと思いまして奮発して買ったんですが、その日飲酒運転の車に轢かれて……。即死だったようです。プレゼントは結局渡せずで。すごい悔いが残ってるんです。だから、ここに来て下さったお客様には……ちゃんと渡してほしいんです。私のようにはなってほしくないですから」

「……そうだったんですか……」

「すみません、暗い話を……」

「いえ、俺から聞いたんですから。こちらこそ、すみません……。あの、お名前はなんていうんです?大切な方の」

もしかしたら、もしかしたらだけど。俺が未練を解消して天国にいくことができたとしたら、その大切な人に会えるかもしれない。その方に会って、この女の人の気持ちを少しでも伝えたい。

「名前……ですか?」

きょとんと首を傾げて、丸い瞳が俺の瞳を見つめる。

「えー……、あのですね。もしかしたら俺、その人のこと知っているかもしれないので、確かめようかと思いまして……」
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