最期の時間を君と共に
「いらっしゃいませ」

「すみません、長話をしてしまって……」

「全然構わないですよ。私も、嬉しかったですから」

やんわりと笑顔を浮かべた。細めた目が無駄に輝いてることに気づき、ジッと見てみれば、涙が溜まっている。俺は女の人の目に手を添えた。

「お、お客様……っ?」

「涙、今は流せないかもしれないですが……。ちゃんと、流してあげてくださいね」

こんなことを言われるなんて思ってもなかったんだろう。また、女の人の目に涙が溜まる。

「……ありがとう、ございます……っ」

女の人が深々とお辞儀をする。小さな嗚咽は、聞こえなかったことにしよう。

「……では、俺はこれで」

女の人に背を向けて、出口に向かう。

「あの……!またいらしてくださいね!」

これは、女の人の本音なのか、義務なのか。分からないが、一応笑っておいた。顔を上げた女の人の目に、涙は浮かんでいなかった。
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