最期の時間を君と共に
「あーあー……。……誓が俺たちの子で本当によかったと思ってる。生意気な奴で……、振り回されてばっかだったがな」

父さんが苦い笑いを浮かべながら、話す。生意気で悪かったな、と明日死んでしまうくせに心の中で悪態をつく。

「生意気なんだけどね、それでもお母さんたちの自慢の子なのよ。なんでもかんでも、痛い思いをしなきゃわからない子で困った時期もあった。でも、何事にも真っ直ぐなんだって捉え方を変えてみれば、悩みなんて吹っ飛んだわ」

自慢の子。こんな俺を自慢の子だと思ってくれてるなんて、意外だ。本当にたくさん迷惑をかけてきたから。

「どんどん大きくなって、いつの間にか母さんの背をこして。しかも、想像以上にイケメンに育って。誓が成長していく姿を、1番近くで見ることができて本当によかった。成長していく姿を見るのって、すっごい楽しいんだぞ」

「だから、忘れないで。誓がいなくなったとしても、お母さんたちの心の中では永遠に生き続けるということを」

「「誓が生まれてくれて本当によかった」」

「……」

ありがとう、と口にしたいのに出てこなくて。出そうとすれば、涙が溢れそうで。強く唇を噛んでから、言葉を出そうとしたら母さんと父さんにとめられた。
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