最期の時間を君と共に
「ありがとうって言いたいんでしょ?分かってるわよ。だから、そんな唇噛んじゃだめ」

「そうだぞー。誓の親なんだ、言葉にしなくたって分かるよ」

母さんと父さんは今までに見たことないくらいの優しい笑顔をみせた。赤ちゃんのときから、今まで見放さずに一生懸命育ててくれた2人。

「……ん」

俺も笑ってみせた。今にも泣きそうな顔で笑ったから、かなりブサイクだろう。でも、2人なら構わないと言ってくれるはずだ。

「さぁ……、お母さんは晩ご飯の準備をするかな」

「俺はちょっと出かけてくる」

おだやかな空気が流れる。さっきまでの空気を色にしたら、青色。いまは朱色だ。
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