最期の時間を君と共に
「落ち着け……。俺、今からそっち行くから。どこにいるんだ?」

『K病院前……。もしかしたら、中にいるかも……。その時は連絡するね』

「わかった、待ってろ」

つーつー。電話のきれた音。行く、なんて言ったけど。行ってしまったら、本当に現実を知ってしまう。

行きたくない。行きたくない。
知りたくない。知りたくない。

なのに、進み出す足。俺の意思を全くきいてくれない。
俺の手は、勢いよくドアを開けた。全速力で走り出す足も、石ころに躓いた足も、俺の足じゃないようだった。とまってほしいのに。俺の願いは報われない。足だけが生きているような。意味がわからないかもしれないけれど、そんな感じだった。
走り続けた俺の足は、縺れ、やっととまった。もう、目の前は病院だ。
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