最期の時間を君と共に
「どうした?お腹でも痛むのか?」

「いや、なんでもない……」

あなたの笑顔に心が撃ち抜かれたんですよ!なんて言えるはずもなく誤魔化す。鈍感なのか、興味がないのか、誓はサラッと流した。

「初めてだね、一緒にお父さんの前に座るなんて」

「最後くらい、一緒にな」

お父さんの仏壇の前にある、座布団をのけて座る。

「写真変わってる」

「私の誕生日とお母さんの誕生日、お父さんの誕生日になると変わるんだよ」

「初耳だわ。最後に知れてよかった」

今のお父さんの写真は、高校生時代のものだと思う。昨日までの写真より、若く見えるし、なにより制服を着ている。隣にいる幼い子とじゃれ合っている写真だ。

「リイチさん、子供好きなんだろうな。優しい顔してる」

「私も思ったよ、それ」

私が生まれて、私を抱く時、不器用ながらに優しい顔で抱いてくれたのかな……。
< 255 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop