最期の時間を君と共に
「ご馳走様」

「はえーな」

「美味しすぎたから……」

なんてのは、半分嘘で半分本当。誓の行動が気になったからだよ。

「ゴミ、捨ててくるね。ちょっと待ってて」

「おぅ」

なんだろう、誓……。私といるの、楽しくないのかな。どうしよう……。

「……ゆずき」

下に降りると、パジャマを手にしたお母さんが廊下を歩いていた。

「お母さん、どうしたの?」

「お風呂入ってくるわね」

「わかった」

普段、そんなこと言ったりしないのに。お母さんも色々そわそわしてるんだな。
リビングに入り、少し歩いた先に食器棚があり、その隣にゴミ箱がある。蓋を開けて、シュークリームの袋を捨て、自分の部屋に向かう。

「……誓」

「あっ、あぁ。どうした?」

私が部屋に帰ってきたことが分からないくらい、考え事をしていたようだ。誓の前にそっと座り、首を横に振る。誓はぎこちなく笑みをつくった。その笑顔を見て、なんだか申し訳なくなる。
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