最期の時間を君と共に
急に誓が自分のカバンを開けた。ガサゴソと片手で何かを探り、ピタリと手を止める。腕時計をみた。そして、カウントダウンをはじめる。

――10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0

「ゆずき、誕生日おめでとう」

「……へっ?」

「ゆずきの生まれた時間は夜9時38分。ぴったりに言いたかったんだ」

「……っ」

今思えば、誓は今日一言も誕生日おめでとうと言っていなかった。ずっと、今のために言わなかったんだ。滅多につけない腕時計をはめてるのも、時間を何度も確認していたのも、全部、全部、私のために――。

「あり……がっと」

ハッキリ見えていたはずの誓がぼやけてくる。涙が溢れてとまらない。拭っても拭っても、溢れてしまう。

「そんな泣くなよ。……プレゼント」

そう言って出てきたのは、今朝も見た紙袋。これは……。

「こんな……高いもの貰えないよ」

「高くなんてねぇ。とりあえず開けてみろ」

「う、うん……」

震える手で紙袋を開けて、綺麗にラッピングされた箱を出す。リボンをほどいて、箱を開けると、そこにあったのは――。
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