最期の時間を君と共に
「は、初めまして!」

俺は慌てて立ち上がり、深くお辞儀をする。だって、ゆずきのお父さんだ。好きな人の、両思いであった人の、お父さんだ。

「えぇ?顔を上げて。実際会うのは初めてなんだから、じっくり顔を見させてくれよ」

俺は恐る恐る顔を上げる。リイチさんは近くにきており、少しびっくりする。リイチさんはまじまじと俺の顔を見る。見終えると、うんうんと頷いた。俺は、へ、と間抜けな声を出しそうになったが、口を手で塞いでとめる。リイチさんの前なんだから、しっかりしなくては。

「……やっぱり、残念だよ」

悲しげに目を伏せた。こんな時に、俺はリイチさんの年齢を考えていた。25歳前後だろうか。……じゃなくて!残念ってなんだろう。

「なにが、ですか……?」

恐る恐る問う。リイチさんは眉を八の字にして困ったように笑った。

「俺はね、誓くんとゆずきが結婚してくれたらいいなと思っていたのさ。だから、残念なんだ。誓くんがここに来てしまったから……。なんて、こんなこと君に言うべきことじゃないのだろうね」

自嘲気味に、また笑った。
リイチさんは俺を認めてくれていた、と受け取っていいのだろうか。結婚してくれたら、なんて。

「すみません……」

「いや、いいさ。不本意だが、君がここに来てくれて嬉しいと思う自分もいるからね。こうやって、話すことができて、ね」
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