最期の時間を君と共に
「ふっ、君は本当にいい反応をしてくれるね。リアクション王にでもなれるんじゃないか?」

心底楽しそうに笑うリイチさん。リアクション王なんて言ってくれたの、リイチさんが初めてだ。

「ふぅ……。いやぁ、君に会えたことが嬉しくてね」

遠くを見つめながら、リイチさんは話し始めた。というよりは、独り言に近いのだろうか。俺は、返事をするか迷った末、しないことにした。あまり、しないほうがいい気がしたのだ。

「誓くんは、ちゃんと満足のいく人生を歩めたかい?」

「……どうでしょうか。深く考えてしまえば、悪い物事ばかり思い出してしまう。でも、今、確かに俺は思います。伝えることが出来てよかったと。……伝えることができたから良い人生だった、と言うのはおかしいのかもしれませんが、俺自身は、伝えることに全てを捧げた感じです」

「そうか……」

「もっと早くに伝えることが出来ていれば……、とも思いますけど。事故にあってしまう前に……」

事故にあう前に言っていれば、悩むことなんてなかった。両思いなのだと知っていれば、真っ直ぐに伝えていたというのに。

「第三者が見て分かることを、当事者が分かるわけないだろう?君たちは、伝えた。それでいいんだよ」

苦笑した俺に、リイチさんは馬鹿にすることなく、優しく笑って、目を逸らした。

「わからないからこそ、複雑で面白いものさ」

「ありがとうございます……」

「さて、そろそろ失礼するよ。睡魔が襲ってきたようだ」

本当に感覚なんだ……。なんて、感心してしまう。

「また来ていいかな?」

「ぜひ」

「ありがとう。次話すときは、タメ口で話そう。気楽に、ね」

ヒラヒラと手を振って出ていった。
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