最期の時間を君と共に
「びっくりするに決まってるだろ……」

高鳴った胸をしずめる。泣いている。泣かないでほしいのが1番の願いだが、それは叶わないものだろう。だから、俺は言わなかった。“笑った顔が素敵”だと。そんな事を言ってゆずきが泣かなくなるのは困るからだ。泣くのも笑うのも、その人の自由だから。俺個人の願いをぶつけるのは違う。

「ふふ、これがこちらの歓迎の印の物です。人それぞれ違うのですよ。誓様にはこれがピッタリではと思ったのですが、どうでしょう?お気に召されましたか?」

ここで、いや、と言ったらダメだろう。モカが見えない威圧をかけてくる。まぁ、俺自身嬉しいんだけど。なんか、言葉で表すのは照れ臭くて頷くだけにする。

「よかったです。こちらのリモコンで、切ったりつけたりできます。彼女しか映らない仕様になってますので」

渡されたリモコンはミニミニサイズ。本当に、1つのボタンしかない。初めて見るそれに、少し興奮する。

「もしかして、リイチさんが俺のこと見てたのって……」

「リイチ様がおっしゃられていたのですか?そうですよ、リイチ様はスクリーンを通して見ていたのです」

うわぁ、全然気づいてなかった。どうやって撮っているんだろう。俺が不思議に思っていることに気づいたのか、モカは説明をしてくれる。

「気づかれない、透明なカメラを使っております。彼女にバレることはないので、安心してください」
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