最期の時間を君と共に
なるほど。だから、気づかなったのか……。

「では、失礼します」

「あぁ、サンキューな」

モカが出ていくと、俺はすぐにスクリーンに映るゆずきを見た。まだ泣いており、時々ゆずきの顔がアップで映るのだが、目は真っ赤に染められていた。これは、しばらく泣き止まないな。ただ、声をかけることのできない俺は、見ることしかできないのだった――。


「うちの誓、ゆずきちゃんにもらってほしかったわぁ」

「ふふふ、そう言ってもらえて嬉しい限りよ」

俺が天国にきて、感覚で数十年とたっていた。俺の部屋には、お父さんにお母さん、サユリさんにリイチさんまで来ていた。リイチさん以外は、しわしわ。だが、中身は相変わらずだった。
こうやって集まることも、珍しいことじゃない。だいぶ前、まぁ、数十年くらい前から続いているものだ。来たと思えば、毎度のようにこの話。俺は、ちゃんと過去に押しやることができたのだけど、お母さんはまだなにかあるそうだ。

「珀くんもいいけれど、うちの誓も中々だと思うのよー」

お母さんは口を尖らせながら話す。
俺がここにきて、2、3年たったあとだろうか。珀がゆずきに告白した。珀は、俺がいなくなったからといって、猛アタックするのではなく、ゆっくり距離を縮めていた。珀らしかった。そんな珀の告白だ、オッケーを出すのだと思っていたのだが……。なんと、ゆずきはふったのだ。俺は届きもしない怒りをぶつけた。だって、ゆずきが珀を好いているということは明らかだったのだ。多分、これはゆずきの本心じゃない。俺に、縛られるなと言ったはずなのに。
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