最期の時間を君と共に
ゆずきは今、どうしているのだろうか……。

「まぁまぁ、ヤヨイ。珀くんであって良かったじゃないか」

「そうだけど……」

お父さんの声で我に返る。
今日のお母さんは普段より機嫌が悪い。お母さんは顔を見ればすぐに分かる。……言っちゃ悪いが、単純なんだろう。

「今日は帰るとするよ。ヤヨイ、行くよ」

「私も帰るわ。誓くん、また」

「じゃあな」

お母さん以外の皆は挨拶をして出ていく。話し声が飛び交って生き生きしていた空間は、あっという間に静かになる。
暇だな。……寝るか。ベッド、と言おうとしたとき、丁度モカが現れた。微妙に口角が上がっている。

「誓様!今、大丈夫ですか?」

「あぁ」

「お客様をお呼びしてもよろしくて?」

「あぁ」

珍しい。モカがわざわざ、こんなことを言うなんて。ここに来たばかりの頃はよく教えてくれていたが、今では全くと言っていいほどだ。なにかあるのか、と妙な胸騒ぎがする。

「入ってもよろしいですよー!」

「は、はいっ」

――っ。遠い昔に聞いた、懐かしくも愛おしい彼女の声。間違うはずがないだろう。この声の主は――

「誓」
、、、、、、、
ゆずきだ。あの頃と全く変わらない笑顔でたっている。
おかしい。天国での姿は、死ぬ前の年齢だというのに。
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