最期の時間を君と共に
自然にこぼれた笑顔と共に言った。微風が私たちの周りにたつ木々の葉を揺らす。

「……なんだよ、急に」

「言いたくなったの。ありがとう。あんないい店に連れていってくれて。誓のおかげ」

今ならなんでも素直に言える気がする。誓は俯いてから、笑った。悲しい、今にも泣き出しそうな笑顔で。

「別に、俺のおかげじゃねぇよ。ゆずきのおかげだよ。ゆずきが俺についてきてくれたから。だから、ありがとう、ゆずき」

まさか、ありがとうが返ってくるなんて、思ってもいなかった。だから、可笑しくて、笑ってしまった。
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