1ページの物語。
-ブサイク-


廊下で見慣れた背中を見つけ、昨日からずっと頭の中でシュミレーションしていたやり取りの第一声を発する。


「お、おいブス子」


「なにブサ男」


眉間にシワを寄らせて…そんな表情もシュミレーション通りだ。

ここからが…ここからは予想通りになるかは俺次第だ。

3日前に大嫌いな本人から聞いてずっと直接こいつから聞きたかったことを発した。



「…お前彼氏と別れたらしいな」


「…だから?あんたに関係ないでしょ」


否定しないと言う事と、


「まだその事には触れないで…」



辛そうに嘆きながら持っている教科書で顔を隠す辺り本当の話だったんだと実感する。


「……関係大有りなんだよ」


「は?」


「待ってたんだよ。お前があんなふざけたナルシスト野郎と別れるのを俺はずっと待ってたんだよ!」


「…なにそれ」


教科書を顔から下ろし、こちらを真っ直ぐ見つめる顔は先程一瞬見えた辛そうな表情から一変、驚いた顔だ。



「……俺じゃダメ?」


あぁ…もう少しカッコ良く言う予定だったのに何とも情けない言葉だ。



「あんなイケメンじゃねぇーけど……

お前みたいなブスには俺くらいのブサイクがお似合いなんだよ!」



「ブサイクがブス言うな」



「うるせぇ!泣いて目を腫らしたブサイクな顔にはさせねぇ…笑顔の……可愛い顔をずっとさせてやるって言ってんだよ!」



「………ふっ、それ告白?」



驚いた顔がまた変わる。



「そ、そうだよっ!で、どっちなんだよ」



「ふふっ、前向きに考えとくわ」


俺が好きな可愛い笑顔に変わる。


「…そうしてくれ」


照れた顔を見られたくなくてガッツポーズする拳をポケットに入れ、視線を廊下に向ける。



「あ、あとあんた殴ったらしいじゃん…あいつのこと」



「あ?それこそお前に関係ない話なんだよっ」



バ、バレてる。

あの野郎…あれだけ言うなって言ったのに。

左頬を腫らすイケメン野郎の口は緩かったらしい。


「嘘つき、あたしの為に殴ったくせに…でも、ありがとう」



「ふんっ…うるせぇ」



「ふふっ、じゃあまたね」


シュミレーション通りにはならなかったけど、いつも泣いて目を腫らすブサイクな顔が可愛い顔に変化する。

それだけで十分だ。



だからさ、とびきりな笑顔で笑っててくれ。

そして、願わくば俺の隣で笑っててよ。

その可愛い笑顔でさ。


【ブサイク】

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