1ページの物語。
-お姫様の願望-
私はお姫様なんて憧れてないの。
だからお姫様の相方の王子様にも同様だ。
私を幸せにしてくれるなら普通の平民でいいの。
彼を寝顔をつめていると、彼の瞼が震えたのでとっさに目を閉じた。
数分後、予想通り彼が目を覚まし起き上がるのを音で感じ、じっと待っていると彼がベッドの端に座るのを薄目で確認するとぱっちり目を開けた。
そして彼の左手を見つめた。
彼は違う人の所有物だった。
左手の薬指に輝く物が光っているのが証拠だ。
極め付けに社内ではお似合い夫婦と噂をされる程だ。
私が入社とすれ違いに退社された彼の奥さん。
だから彼に似合うと言われる想像の奥さんは気品ある奥さんだった。
「あ、もしもし?
あぁ、今はホテル」
だって目の前で綺麗な大きな背中を向けて話す彼はとても気高く、自信家な彼だ。
そんな彼が選ぶ相手なんてきっと普通じゃない。
「明日帰るよ。ん?あぁ、部下は女性だけど下の階の部屋だし、商談が終わればすぐ解散するからあまり関わらないよ。
だから心配することなんて何もないよ、あぁ明日はそうだな…カレー食べたいかな。
カレー作っておいてよ。
ん、じゃあまた明日ね」
そう思っていたのに彼自体が
「あぁ、起きてたんだ。
どうする?一緒にお風呂入る?」
「…貴方も平民なのね」
「え?」
「ううん、何でもないです。
一緒にお風呂入りましょ?」
何も纏わない状態でベッドから起き上がり彼に軽くキスをする。
「連れて行って…?」
「ふ、姫の仰せのままに」
彼の首に腕を伸ばして顔を埋めると涙を引っ込める為にため息を一つ吐いた。
「何?疲れた?」
「いえ」
彼はため息の理由なんて一生分からないだろう。
「今日は一日中一緒にいれるよ、お姫様」
「…嬉しい」
そんな外面を演じた貴方じゃなくて私にも普通な表情を見せて欲しかった。
たった一晩しか姫に尽くさない偽物の王子様じゃなくて、ただ幸せそうに普通の話をする平民の一面を。
貴方が平民だと明かすなら
「今日の夜は私のモノです」
きっとお姫様も偽物のお姫様だと明かすから。
【お姫様の願望】