1ページの物語。
-馬鹿って-
「なぁ、リンダ〜」
「ん?」
「俺、また振られた〜。何が悪いんだろう…」
「……さぁな。それより自習だからってこっち来るなよ」
「なんでそんなに冷たいんだよ。振られた俺を慰めてくれよな〜」
普通に考えて、好きでもないのにただ顔で選んでいくからだろ。
そう内心思うが、目の前にいるチャラい友達には言わない。
こういうのは自分で気づいた方が効果的だからだ。
「リンダは今彼女いないんだよな?」
「ん?あぁ」
空返事をしつつ、何だか騒がしいグラウンドに視線を向けると2年生の女子がソフトボールをしていた。
俺の視線を追って友達もグラウンドに目を向ける。
「体育いいなぁ、俺も体動かしてぇー」
「…なぁ」
確かこのクラスってあいつのクラスじゃあ…。
あ、やっぱりいた…それもピッチャーだ。
「庄司、ちゃんと投げてよー!デッドボールしたら承知しないから!」
「ピッチャー初心者を脅さないでよ〜、いくよー」
まぁ安定の帰宅部だもんな。
あ…
「痛っ!庄司!わざとでしょ!
何お約束してんのよ」
「わざとで出来る訳ないでしょー!ごめんって」
なんだあれ…。
なんだあのフォーム…なんであのフォームで綺麗に当てられるんだ?
声を我慢して笑っていると目の前の奴も一緒に笑っていて、
「ぷっ、庄司ちゃん?面白いな」
「あぁ…」
一瞬にしてこれはやばいと思った。
「あの子可愛いな」
やはり…チャラ男がさっきよりガン見している。
「……そうか?それより当てられた子の方が可愛いぞ」
「あー…そう言われてみれば」
「それに庄司?っていう子性格的にも幼そうだからお前はバッターの方がいいんじゃね?」
「確かに!あの子なんていう名前なんだろ」
こいつって本当馬鹿だよな…まぁ、それで今回助かったけどな。
馬鹿から視線を外に向けると笑ってバッターの子に謝っている幸子。
「本当…馬鹿だよな」
「は?俺?」
「そうそう、お前」
クラスの馬鹿を流しつつ、携帯を開いた。
画面には笑顔で弁当を食べる幸子。
「まぁ、馬鹿って」
「ん?」
「すげぇ、可愛いよな」
「え…」
「ん?」
まぁ、そんなの君限定だけどね。
【馬鹿って】.....from『伝え忘れた想い。』