ナナクセ探し 中学生編
改めて川野を見ると、俯いてペットボトルを見つめていた。

「……久し振りだね。元気だった?」

「うん。」

「…………。」

ああ、何を話せば良いか分からない。
辺りはまだ明るいが、もう、夕食時だ。
そろそろ本当に帰る時間だろう。

「送っていくよ。」

「有り難う。」

並んで歩きつつ彼女を見下ろすと、つむじが見えた。暑いからだろう、髪をひとつに結んであって、うなじに後れ毛がかかっている。

その華奢(きゃしゃ)なうなじに触れてみたかった。

そんな事を思い歩いていると、つい、遅れがちになってしまい、彼女は振り向いて訝しげな顔をした。

「宿題、どう?分からない所ある?」

何か話さなければ、と思い聞いてみる。

「数学が結構あるかな。」

「一緒にやろうか。」

俺の家に来るかと聞きかけたが、下心があるように取られたくなかったので、言わなかった。

いや、実際は下心はあるが。

「じゃ、明日も図書館でどう?」

「お願いします。
村上君教えるの上手だから、助かっちゃう。」

彼女と手を繋ぎたくて右手を伸ばしかけた時、後方から小学生が自転車で追い越そうとするのが見えた。

とっさに彼女の肩を掴んで引き寄せる。
彼女はバランスをくずし、俺の腕の中にいた。

「あ、有り難う。」

彼女が赤くなる。
このまま離したくなかったが、抱き締める訳にもいかないので、そっと体を離した。

「腹減った。帰ろう。」

「うん。」

今夜は中々寝付けないかも知れない。
切なくて永い夜になりそうだった。
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