君の隣で花が散る
「すごーいっ」


正直、私はこんなに大きな店やショッピングモールでは洋服を買ったことはなかった。

れおに言ったらまた馬鹿にされそうだったから言わなかったけど。


沢山の種類の洋服がよりどりみどりにあって、スカートだけでも色違いも合わせたら数え切れないほどだった。

ハンガーにかけられている服が私の気持ちを高ぶらせた。


「どーしよーかなーっ!」


心躍る気分で服の合間を縫うように進む。

自然に口元が綻びる。


「迷うなー・・・」



私はれおが一緒に来ていることも、この選んだ洋服がファッションショーで着るものになることも忘れていた。



そして
三十分が経過。





一時間が経過。





一時間が経過。






一時間半が経過。






「杏花、お前ほんとにあほか?」


私が服を選び始めて二時間が経った今、店の中でれおが私に言う。


「は? なんでよ」

「だってそれ」


れおは私が両手いっぱいに抱えている様々な洋服の山を指差す。


「......これがなによ」


なにを言われるかは大体想像がつく。



「......多すぎ」


やっぱり言われた。


自分でもわかっているよ "多すぎ”ってことくらい。

でも選べなかったの!

どれもこれも可愛すぎて......。


「二時間もかかった理由はこれか」

れおはため息をこぼした。
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