君の隣で花が散る
何かを抱えているような暗い黒い瞳にかかる長い黒髪。
すらりと伸びる足。


整った顔立ちは無表情で、その男の子はすたすたと黒板の前にやって来た。



あれ、なにかがおかしい。



男の子は黒板にすらすらと名前を書いていく。



『東条れお』



男の子が黒板に背を向け、私たちを見る。


「東条れおです。よろしく」


表情をまったく変えず、無愛想に男の子、れおが自己紹介をする。



やっぱりなにかおかしい。

なにも見えない。感じない。

ぼんやりともはっきりとも『死に際』が見えない。


なんで?


寿命が長い人はぼんやりとしか見えないという事はあるけど、全く見えないというのは初めてだ。



「東条、一番後ろに新しい席を出しているからそこな」


一番後ろの新しい席ってどこだろう。

転校生ってなにかと面倒だから。

巻き込まれたら困るよ。
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