君の隣で花が散る
ファッションショーを紹介するアナウンスが流れ、一人ずつ舞台へ歩いていく。

舞台袖にいる人の数がどんどん減っていく。


このファッションショーは、ファッションショーによくある舞台から突き出ている道
みたいなものはなくて、モデルは舞台の真ん中で二回ほどポーズをして反対側の舞台袖にはける。

でも、モデルはピンポイントで照明に照らされる。

緊張でうまく歩けるかわからなかった。


『死に際』は別に観客を見なければいいんだけど、緊張でみてしまいそうなんだよな~。


「次だ、杏花」

「へ?」


私の前にもう列はなく、前にいたはずの人が舞台を歩いていた。


「がんばれ」


私の後ろにいたれおに背中を押されて前へ出る。
私の後に舞台を歩くのかな。

「まぶしっ」


観客に聞こえないように小さく感想を述べる。

照明ってこんなに眩しいものなの?


慣れない足取りで私は舞台の中央に向かって進む。

私の前に歩いていた人が舞台袖に消えた。


舞台中央に着くと、体全体を観客のほうへ向けた。

目線を向けたおかげで観客と目を合わせずにすんだ。


腰に手を当て右足に体重をのせる。

次に反対の足に体重をのせる。

簡単だけどそれっぽくみえるポーズだ。

これでポーズは二回した。

少し安心して体の向きを変えた。

そして再び歩き出す。


視界の片隅でれおが舞台に出てきたのがわかった。


「あっ」



誰かに足をつかまれた様に感じて思わず声をあげる。


それから私はつまさきに体重がかかってしまった。




......倒れる!



「杏花っ!」

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