花京院社長と私のナイショな関係
「解雇通知書」
人事部に行くよう言われ、渡された紙にはそう書いてあった。
…出社するように言われたのは、容疑が晴れたからじゃなかったんだ。
クビかあ。
散々泣いてもう枯れたと思った涙がまた溢れてきた。
通知書には篤人さんの署名がある。
こんな形で終わるのか…。
篤人さんは…社長は私を信じてくれなかった。
あのマンションにはもう居られない。
自分のアパートは解約しちゃったし住むところもない。貯金もないし…実家に帰るしかないのか。
挨拶…と、私物も取りに行かなきゃ。
私は重い足を引きずって 秘書室に向かった。
「お疲れ様です」
「あら、まどかちゃん。お久しぶり」
事件を起こしたことになっている私に、室長や秘書さんたちは苦笑して遠巻きに見ていただけだったけど、雪乃さんはいつもの素敵な笑顔で迎えてくれた。いつも通りに可愛くていい匂い。
だけどなぜか…やっぱり背中がゾクッとする。
「残念だわ。こんな形で辞めるなんて。寂しくなるわね」
私物を片付ける私の隣で、雪乃さんがしんみりと呟いた。
「私も、もうすぐここを辞めるの」
「え?」
「ふふ、ちょっとご縁があって、ね」
嬉しそうに笑う雪乃さんの声を拾って、秘書室長が「君の不始末を雪乃さんが救ってくれたんだ。警察沙汰にならなかったのは彼女のおかげだよ。感謝しなさい」と言った。
どういう意味?
理解できていない私に室長が「実は私たちもついさっき聞いたところなんだが」と追加説明してくれた。
「雪乃さんは、サニーの社長のご息女でね。彼女と花京院社長の結婚を条件にサニーとの契約を継続していただけることになったんだ」
他社のシステム開発は予想していたよりも進んでおらず、サニーとの業務提携を継続できれば十分に巻き返しが図れる見通しだ、と室長が説明してくれたけど、頭にはあまり入ってこなかった。
雪乃さんがサニーの社長令嬢。
社長と…篤人さんが、雪乃さんと結婚。
「今時、政略結婚なんてどうかとは思うのだけど、少しでも社長のお役に立てるのなら嬉しいわ」
ふふ、と嬉しそうに微笑む雪乃さんに、みんなが寄ってきて「政略結婚なんて言って、お付き合いされてるって噂、前からありましたよね?」「もしかして、もともと結婚の予定があったとか?」と口々に質問している。
頬を染める雪乃さんを囲んで笑い声が上がる中、秘書室の内線が鳴り室長が出た。
「雪乃さん、社長が呼んでる。夏目、君もだ。最後の挨拶をしてきて」
頭は真っ白で、何も考えられなかった。
人事部に行くよう言われ、渡された紙にはそう書いてあった。
…出社するように言われたのは、容疑が晴れたからじゃなかったんだ。
クビかあ。
散々泣いてもう枯れたと思った涙がまた溢れてきた。
通知書には篤人さんの署名がある。
こんな形で終わるのか…。
篤人さんは…社長は私を信じてくれなかった。
あのマンションにはもう居られない。
自分のアパートは解約しちゃったし住むところもない。貯金もないし…実家に帰るしかないのか。
挨拶…と、私物も取りに行かなきゃ。
私は重い足を引きずって 秘書室に向かった。
「お疲れ様です」
「あら、まどかちゃん。お久しぶり」
事件を起こしたことになっている私に、室長や秘書さんたちは苦笑して遠巻きに見ていただけだったけど、雪乃さんはいつもの素敵な笑顔で迎えてくれた。いつも通りに可愛くていい匂い。
だけどなぜか…やっぱり背中がゾクッとする。
「残念だわ。こんな形で辞めるなんて。寂しくなるわね」
私物を片付ける私の隣で、雪乃さんがしんみりと呟いた。
「私も、もうすぐここを辞めるの」
「え?」
「ふふ、ちょっとご縁があって、ね」
嬉しそうに笑う雪乃さんの声を拾って、秘書室長が「君の不始末を雪乃さんが救ってくれたんだ。警察沙汰にならなかったのは彼女のおかげだよ。感謝しなさい」と言った。
どういう意味?
理解できていない私に室長が「実は私たちもついさっき聞いたところなんだが」と追加説明してくれた。
「雪乃さんは、サニーの社長のご息女でね。彼女と花京院社長の結婚を条件にサニーとの契約を継続していただけることになったんだ」
他社のシステム開発は予想していたよりも進んでおらず、サニーとの業務提携を継続できれば十分に巻き返しが図れる見通しだ、と室長が説明してくれたけど、頭にはあまり入ってこなかった。
雪乃さんがサニーの社長令嬢。
社長と…篤人さんが、雪乃さんと結婚。
「今時、政略結婚なんてどうかとは思うのだけど、少しでも社長のお役に立てるのなら嬉しいわ」
ふふ、と嬉しそうに微笑む雪乃さんに、みんなが寄ってきて「政略結婚なんて言って、お付き合いされてるって噂、前からありましたよね?」「もしかして、もともと結婚の予定があったとか?」と口々に質問している。
頬を染める雪乃さんを囲んで笑い声が上がる中、秘書室の内線が鳴り室長が出た。
「雪乃さん、社長が呼んでる。夏目、君もだ。最後の挨拶をしてきて」
頭は真っ白で、何も考えられなかった。