花京院社長と私のナイショな関係
おっさんは花京院社長のご先祖様で現在社長の守護霊らしい。
それを聞いて、腑に落ちた。あーなるほどって。
納得できたというか、それもありかもしれないと思えた。
私の地元は先祖崇拝が生活に密着している。朝晩当たり前のようにお参りして、良いことがあればご先祖様に報告し、悪いことをすれば「ご先祖様が見てるぞ」と怒られる。
そうやってご先祖様が身近な存在として育ってるからか、おっさんはご先祖様だと言われてちょっと怖くなくなった。ごはんも普通に食べてるし。
私が他人様のご先祖様がはっきりと視えるのは異常だけど、おばあ曰く私はサーダカ―(霊能者)になったらしいから、この世に有らざるものが視えてしまうのは仕方がないんだろう。
地元ではサーダカ―は突然何かに怯えたり泣いたりパニックになることがあると聞いていたけど、こういうものが視えちゃったら、そりゃあ落ち着かないわ。
「この状況でよく食えるな…」
社長はばくばく食べる私に呆れたようにため息を吐いた。あんまり食が進まないらしい。
社長はお育ちが良いらしく食べ方や箸の使い方がすごく綺麗。あ、手の作りも綺麗。指も長いなあ。
背がすごく高い人だと思ったけど、お座敷に座ると目の高さはそれほど私と差がない。脚がそれだけ長いってことだ。8頭身か、もしかして9頭身。パリコレモデルかってくらいにスタイルがいい。
顔立ちも彫が深くて同じ日本人とは思えない。ハーフとかクォーターかな。顔がこんっなに小さいし。
鼻がしゅっと高くて目はアーモンド型。両端がきゅっと引き締まった口元。目の色とか琥珀色ぽい澄んだ茶色。
ものすごい美人さんだ。纏う雰囲気までもが色っぽくて魅惑的でこんなに間近でみていると引き込まれそうに……
「観察は終わった?」
苦笑いしながら言われた言葉に「うわあ」ってなった。私すごいガン見してたよ!
「す、すみません!」
なんか生身の人間ぽくなくて、テレビとかスマホの画面の向こうの人みたいな感覚になってた!
「まあワシの血ぃ引いとるだけあって色男やさかい見とれるのもしゃあないわな」
おっさんがニヤニヤしながら「これ剥いてや」と、お出しに浸かった海老を指さしている。
生身の人間ぽくないと言えばこっちだろ、私。
明らかに人間でないおっさんの海老の殻を剝きながら、自分がちょっと嫌になった。
「夏目さんは、彼が怖くないの?」
「え?」
「こいつが守護霊だって信じたわけ?俺でもまだ信じられないのに」
社長は理解できないとでも言いたげだった。
まあ…泣くとか喚くとかパニクるか。普通なら。
「そりゃ腰抜かすくらい驚きましたよ。社長の肩にちっさい人間が乗ってるんですもん」
今思い出してもびっくりするわ。イケメン若社長とちっさいおっさん。シュールすぎる。
「でも社長のご先祖様だって言うし。それに慣れてるっていうと変なんですけど、私の地元って霊とか変なものが視える人が結構いるんです。先週カラスと話し合いした時にこんなこと言われたんだけどー、とか近所のおばさんが話してても、へぇそーなのって会話が成り立つような所なんです」
そんな所で生まれ育ったんで普通の人よりは免疫があるかもしてません、と言うと社長は「…すごい地元だな」と若干引いていた。普通はまあこの反応よね。私の田舎は東京とはだいぶ違う感覚の所だし。
社長はひとつ息を吐いて「とにかく」と続けた。
「今までの話を纏めると、夏目さんが黒い靄を視るようになったのは一昨日から。靄はすべての人に取り憑いているわけではなく、無い人もいる。靄が憑いている人は俺みたいに周りを囲むような形態ではなく体に纏わりついている。靄を吸い込むのも無意識で意識しての行動ではない、ってことでいい?」
私は一昨日からのことを思い出し、頷いた。
それを聞いて、腑に落ちた。あーなるほどって。
納得できたというか、それもありかもしれないと思えた。
私の地元は先祖崇拝が生活に密着している。朝晩当たり前のようにお参りして、良いことがあればご先祖様に報告し、悪いことをすれば「ご先祖様が見てるぞ」と怒られる。
そうやってご先祖様が身近な存在として育ってるからか、おっさんはご先祖様だと言われてちょっと怖くなくなった。ごはんも普通に食べてるし。
私が他人様のご先祖様がはっきりと視えるのは異常だけど、おばあ曰く私はサーダカ―(霊能者)になったらしいから、この世に有らざるものが視えてしまうのは仕方がないんだろう。
地元ではサーダカ―は突然何かに怯えたり泣いたりパニックになることがあると聞いていたけど、こういうものが視えちゃったら、そりゃあ落ち着かないわ。
「この状況でよく食えるな…」
社長はばくばく食べる私に呆れたようにため息を吐いた。あんまり食が進まないらしい。
社長はお育ちが良いらしく食べ方や箸の使い方がすごく綺麗。あ、手の作りも綺麗。指も長いなあ。
背がすごく高い人だと思ったけど、お座敷に座ると目の高さはそれほど私と差がない。脚がそれだけ長いってことだ。8頭身か、もしかして9頭身。パリコレモデルかってくらいにスタイルがいい。
顔立ちも彫が深くて同じ日本人とは思えない。ハーフとかクォーターかな。顔がこんっなに小さいし。
鼻がしゅっと高くて目はアーモンド型。両端がきゅっと引き締まった口元。目の色とか琥珀色ぽい澄んだ茶色。
ものすごい美人さんだ。纏う雰囲気までもが色っぽくて魅惑的でこんなに間近でみていると引き込まれそうに……
「観察は終わった?」
苦笑いしながら言われた言葉に「うわあ」ってなった。私すごいガン見してたよ!
「す、すみません!」
なんか生身の人間ぽくなくて、テレビとかスマホの画面の向こうの人みたいな感覚になってた!
「まあワシの血ぃ引いとるだけあって色男やさかい見とれるのもしゃあないわな」
おっさんがニヤニヤしながら「これ剥いてや」と、お出しに浸かった海老を指さしている。
生身の人間ぽくないと言えばこっちだろ、私。
明らかに人間でないおっさんの海老の殻を剝きながら、自分がちょっと嫌になった。
「夏目さんは、彼が怖くないの?」
「え?」
「こいつが守護霊だって信じたわけ?俺でもまだ信じられないのに」
社長は理解できないとでも言いたげだった。
まあ…泣くとか喚くとかパニクるか。普通なら。
「そりゃ腰抜かすくらい驚きましたよ。社長の肩にちっさい人間が乗ってるんですもん」
今思い出してもびっくりするわ。イケメン若社長とちっさいおっさん。シュールすぎる。
「でも社長のご先祖様だって言うし。それに慣れてるっていうと変なんですけど、私の地元って霊とか変なものが視える人が結構いるんです。先週カラスと話し合いした時にこんなこと言われたんだけどー、とか近所のおばさんが話してても、へぇそーなのって会話が成り立つような所なんです」
そんな所で生まれ育ったんで普通の人よりは免疫があるかもしてません、と言うと社長は「…すごい地元だな」と若干引いていた。普通はまあこの反応よね。私の田舎は東京とはだいぶ違う感覚の所だし。
社長はひとつ息を吐いて「とにかく」と続けた。
「今までの話を纏めると、夏目さんが黒い靄を視るようになったのは一昨日から。靄はすべての人に取り憑いているわけではなく、無い人もいる。靄が憑いている人は俺みたいに周りを囲むような形態ではなく体に纏わりついている。靄を吸い込むのも無意識で意識しての行動ではない、ってことでいい?」
私は一昨日からのことを思い出し、頷いた。