bajo la luz de la luna
『……前は気味の悪い手紙だけだったのよ。それが段々エスカレートして……』



 乱暴に渡されたどの写真にもアンヘラが写っている。仕事中の彼女のものはまだ良かった。写真を見ていくにつれて、服屋の店員と楽しそうに話す様子・帰宅する後ろ姿、事もあろうに楽屋で更衣している彼女の写真まで出てきた。これにはアタシ達も眉をひそめる。



『最近じゃ、帰宅する時に誰かの気配がしてしょうがないのよ……不安で夜も眠れない。』



 だから何とかして欲しいの、と彼女は続ける。我儘な歌姫も、人にお願い事をする時はしおらしくなるらしい。変わりように内心驚きつつもアタシ達が頷いた、その時だった。

 コンコン、とノックの音がした。アロンソ氏の『何だ?』という問いには『アンヘラさんにお届け物が……』という返事。アンヘラに渡った机上の小包が開かれる。瞬間、彼女の表情が凍り付いた。



『……いやぁーっ!!』



 頭を押さえて叫ぶアンヘラ。慌てて箱を覗けば、詰め込まれた白い綿の上にたった一枚の写真が乗っていた。

 少し目付きは悪いが、まっすぐな黒髪が美しい、アタシと同い年くらいの女性。何故アンヘラは悲鳴を上げたのだろう……
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