bajo la luz de la luna
 ――澄んだアカペラが、はっきりとした意志を持って響き渡った。“お砂糖たっぷりのクリームなんてもう必要ない。私は自分の味を見つけたわ”。彼女の目は、そう語っているかのようだ。

 よくよく聴いてみれば、彼女の真の歌声は張りがあってとても力強い。囁くように歌っていた頃よりも、今の方が遥かに彼女の持ち味が出ている。観客は彼女の歌唱力に改めて驚いているようだ。誰もがポカンと口を開けている。



『……やりますね、彼女。』

『ええ、こっちの方がずっと良いわ。』



 思わずこぼれた笑顔に、ガルシアが『あなたも笑えたんですね』と失礼な発言をした。肘打ちを食らわせてやれば、『うっ』と押し殺した呻きが聞こえる。アタシは何食わぬ顔でステージの歌姫に視線を戻した。

 ――彼女は“天使”ではない。本物の“歌姫(ディーバ)”だった。

 ショーが終わって客がみんな帰ってしまってから、アタシ達はもう一度アンヘラと対面した。先程心の中で思った台詞を言ってやると、彼女は頬を赤くして喜んだ。アタシは男じゃないわよ……と言いたいところだが黙っていよう。傍らで密かに笑った婚約者には、さりげなく睨みを利かせておいた。
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