bajo la luz de la luna
 時が、止まったのかと思った。コイツが今言ったことは本当なのだろうか。ローサとソルは、昔から対立関係にあるファミリーだったと聞いている。だから、ローサの傘下にあったファミリーがソルを襲ったのだと、そう聞いていた。

 考えてみれば、その事件が起こるに至った経緯をアタシは何も知らない。奴は知っているというのだろうか。



『……ねぇ。アンタは十年前のことを知ってるの?』

『知らないから憤慨しているんだろう?訳も分からず攻撃されて……話を聞ける家族も、僕にはもう居ないんだからな。』



 自信に満ちている顔が少しだけ翳る。この白スーツの男は“家族の温もり”というものを、もう感じることが出来ないのだ。

 何か言ってやるべきなのだろうが、何も浮かばない。薬の苦さを堪える子供のように、ただその場に立ち続けていたその時。白スーツの背後から、いくつかの人影が現れたのだった。



『ボス、何をなさってるんですか?お体が冷えてしまいます。早く帰りましょう。』

『……あぁ、そうだな。』



 側近らしい男性に言われ、奴が背を向ける。大きな謎を残したまま、フランシスコはアタシ達の前から姿を消した。
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