bajo la luz de la luna

　電話を切り、マルタとアデラが『あらあら』と言っている側を通り過ぎる。ガルシア・ソニア・グレイへそれぞれワンコール。集まってきた彼らに事情を説明し、夕食がどうこう言っている暇もなく、すぐにトリノへ飛んだ。

　――生憎イタリアは曇り空で、視界が良いとは言い難かった。華やかな筈のこの国が、上空から見ても活気をなくしている。マフィア同士の小さな争いが起こっているその場所へ降り立つと、先に仲裁しに入っていたチェーロと合流。二つの大規模ファミリーの登場に、彼らは少なからず驚いている。



『ローサとチェーロが何の用だ!?これは我々の問題なんだ、放っておいてくれ!!』



　ドイツ語でそう叫んだのは、ヴォルケファミリーのボス、クリスチアン・ネーベル。限られたファミリーとしか同盟を組まず、常に隊員の入れ替えを行っているという彼のファミリーは、絶えずその形を変える“雲”という名がとてもふさわしい。

　葡萄酒色の髪を短く刈り、恐い面をした30代のクリスさん。彼は、一見するとチャラチャラしたおじ様であるルッツさんと睨み合っている。日本でいう、ヤクザと金持ち坊っちゃんとのいざこざのような雰囲気を醸し出しながら。