bajo la luz de la luna
『……シーラ、ちょっと聞きたいことがあるんだ。この人に会ったことがあるかい?』



 男はそう言って、携帯のカメラ部分をルッツさんへ向ける。赤毛の少女には、テレビ電話を通して彼の姿が見えているだろう。



『あら、どなた?パパの仕事仲間の方かしら。初めまして!』



 礼儀正しい少女はにこやかに挨拶する。これで決まりだ。ルッツさんは白、つまりは無実だということになる。

 父親は安堵の息をつき、ルッツさんを自分の友人だと言って娘をやり過ごした。そして、風邪に気を付けるように、ママにもよろしくと伝え、電話を切った。



『……娘に乱暴したのは、どうやらこの方ではないようです。疑ってしまってすみませんでした。』



 父親が深々と頭を下げれば、ルッツさんは『いやいや、分かってくれりゃあ良いんだ!』と言って顔を上げるよう促す。クリスさんは『普段の行いが悪いから疑われるんだろう。早く嫁をもらえ』と呟き、ルッツさんに冷ややかな目を向けている。

 ルッツさんは女癖が悪い訳ではないと思うけれど、この少しチャラチャラした服装は何とかすべきだろう。群に『まずは見た目からですね』と言われ、彼は苦笑して頷いた。
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