bajo la luz de la luna
 ――群の胸に抱(いだ)かれて何も見えないでいると、大きな発砲音がして騒ぎが治まった。漸く彼から解放されたアタシの瞳に映ったのは、胸の辺りから血を流して倒れている男だった。ソニアが『ボス……』と呟いたけれど、何も返せない。目の前で起きた事実に、ただただ呆然とする。

 その内空が大粒の涙を流し始めて、悪天候を苦手とするシュヴァルベの人々は申し訳なさそうにしながら退散。クリスさん率いるヴォルケも、“それはお前達で解決することだ”とばかりに姿を消した。



「……俺が嫌いになったか?」



 自嘲するような笑みを浮かべ、群はアタシにそう言った。口に出された日本語は悲しい響きを持ち、彼の右手には薄く煙を吐き出している銃が握られたままだ。



「上手く言えないけれど……アナタは殺す人間を選ぶでしょう?だから、軽蔑はしないわ。」



 命を助けられたのに、素直にお礼が言えない。彼もきっと、そんな言葉は求めていないだろう。アタシの台詞をどう受け取ったのかは分からないけれど、群は憂いを帯びた表情のまま、アタシの髪を撫でてくれた。チェーロもローサ側の人間も、彼のその仕草にやっと小さく息をついた。
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