bajo la luz de la luna
 隣に腰かけた群はほとんど物を言わず、離陸してから僅か数十分で眠りに落ちてしまった。いつもならアタシやガルシアをからかって遊んでいるだろうに、余程精神的に疲れていたとみえる。安らかな寝顔を見て、少しだけホッとした。



『ご心配をおかけしてすみません。もうすぐ屋敷に着きますので、どうかボスのお側に……』

『愚痴も弱音も吐かない方ですから、ドン・ローサと居れば、きっと楽な気持ちになる筈です。私達のボスをよろしくお願いします!』



 頭を下げるエンゾさんや、群の他の部下達。彼らに顔を上げてくれと声をかけて、今一度、隣で眠る彼に目をやった。

 顔にかかるサラリとした飴色を払えば、黄色(おうしょく)の肌に影を作る睫毛や、薄く色付いた紅色の唇が姿を現した。見つめていると、胸の奥が何だか熱くなる。無性に、泣きたくなった。



『……変ね。この人はアタシより五つも年上なのに、今はもっと幼く見えるわ。きっと、心が“その時”で止まっているのね。』



 親友の命が奪われなかったら、群がこの世界に来ることもなかっただろうに。そう呟いたら、エンゾさんがポツリポツリと喋り始めた。
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