bajo la luz de la luna

『ボスを……群をこの世界へ連れてきたのは私です。遠く離れた日本に居るチェーロの血縁がフェンシングで偉業を成したというので会いに行ったら、その少年は死んだような目をしていました。』



　群を見つめるエンゾさんの表情は、弟を気遣う兄のようだ。彼が群の呼び名を変えたことで、それが強調される。



『何とかしたいと思ったんです。丁度その頃、チェーロは次期後継者を探していました。当時のボスが老齢で、早く若い知識のある者をボスにと、皆が焦っていたように思います。
……私は群に、居場所をあげたかったのかもしれませんね。悲しみの中を彷徨う彼に、新しい仲間を作って欲しかったんだと思います。』



　哀愁漂う笑みを、エンゾさんはアタシに向ける。“申し訳ない”という彼の思いが見え隠れするその台詞は、誰よりも群のことを考えているからこそ出たものだ。



『……アナタが悪いのではないわ。よく考えたら、群はこの世界に入って良かったのかもしれない。そうでなければきっと、犯罪者になっていたと思うわ。この職業も決して良いものではないけれど、彼が銃を使うのは、大切なものを守る時だけだもの。』