bajo la luz de la luna
 図星だ……なんて言えない。11月23日が群の誕生日だということは、一ヶ月程前までは確かに記憶にあった筈なのに。何を贈ろうかと考えあぐねる暇もなく、慣れないボスの仕事をこなす毎日だったのだと、胸の奥で弁解させて頂こう。



「……ごめんなさい。」

「おいおい、本気で落ち込むなよ。冗談が通じない奴だな。」



 いじめているような気分になるからやめろ、と口にした彼を見やる。だって、群はアタシに贈り物をしてくれたのに。誕生日当日、就任式の4月27日にではなかったけれど、後日綺麗な薔薇の花束にカードを添えて届けてくれたのに。

 自分が酷く情けなくて、悔しい。唇を噛み締めそうになった時、コントラバスのような音色がアタシの名前を呼んだ。



「……未来、来いよ。」



 棕櫚の目はちっとも怒っておらず、むしろ穏やかに笑っている。彼が横になったベッドの、空けられたスペース。そこに自分を落ち着けて、今一度、その目を見つめてみる。



「怒ってねぇけど、罰として明日一日付き合ってもらうからな。」



 意地悪く笑う唇からお休みの口付け。心中でもう一度謝って、ゆっくりと瞳を閉じた。
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