bajo la luz de la luna
「……悪い。苦しくなかったか?」

「え?」



 彼の第一声は、それだった。熟睡中、無意識にアタシの体を拘束してしまったことへの謝罪、だったのだ。拍子抜けして、フッと笑みがこぼれる。



「頭、まだ働いてないんじゃない?」

「……いや、正常だ。朝食にするか。」



 からかわれたことに少々ムッとしたのか、不機嫌そうに目を細めた群。アタシだって、いつもからかわれてばかりじゃないのよ。内心呟いてやると、それを読み取ったのか、彼の表情が柔らかくなった。



「この程度で良い気になってんじゃねぇぞ。」

「あら、それは失礼。今日は一日アナタに付き合ってあげる約束だから、是非とも穏やかな気分で過ごして欲しいわ。」

「あぁ、そうだったな。ところでお前、何か忘れてねぇか?」



 小さな子供にクイズを出すような口調で、群。それに対する答えを、アタシは勿論知っている。



「……お誕生日、おめでとう。」



 紅色の唇へ、静かにぬくもりを落とす。アタシ達を照らす朝の光は、カーテンの隙間から見え隠れして遊んでいる。



「……ありがとな。」



 微笑と共にお礼が返る。今日から彼は、24歳だ。
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