bajo la luz de la luna
 押し出された手球が枠にぶつかり、鈍い音と共に左へ逸れる。その軌道の先にあった2番が脇をかすられ、すぐ側のポケットへと消えていく。ガコン、という音が静寂を切り裂いた。



『おぉーっ!流石はオレ達のボスだぜ!!』



 興奮した表情で言ったグレイが伸ばしてきた右手に、自らの右手をパチンと当ててやる。続いてソニアともハイタッチを交わした。



『ボス!このまま9番も頂いちゃって!!』

『勿論よ。みんなの分の昼食も奢らせるわ。』



 アタシの一言に『何て図々しい……』と呟いた者が二名居たけれど、無視。飴色の髪の人物は自分から賭けの内容を『昼飯代』と指定してきたのだし、小舅は自分が奢られる側になるかもしれないのだから黙っていれば良いのに。そう思いつつ、次なる標的に目を向けた。

 3番はポケットのすぐ近くにあり、容易く落とすことが出来た。小さな拍手が起こったが、問題は次の4番だ。状況は2番の時と同じワンクッション置いてのポケットインだけど、標的からポケットまでの距離が長い。強めに手球を撞かなければならないということになるが……果たして、4番を落とせるだけの力と技術がアタシにあるだろうか。
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