bajo la luz de la luna
『えーっ!神小柴さん、ダブルでポケットイン!?凄いっ!!』



 ソニアが普段より更に早口で叫び、群の部下達から歓声が上がる。グレイは彼らと共に拍手をしていたけれど、ガルシアはただジッと、群の次の一手を待っている。アタシはといえば、我が秘書と同じく、飴色の髪の男を凝視していた。



『ソニア、興奮しすぎだぞ。お前、任務で無茶して腕折ってたんだって?気を付けろよ。未来の寿命が縮まるぞ。』

『平気よ!でも、ボスの寿命を縮めるかもしれないなら気を付けなきゃ。ボスを守るのが私の役目なのに、自ら縮めてたんじゃ話にならないわ!』



 そう言って、隣で小さく笑うソニア。アタシは『これからは気を付けて』と告げ、再び群に目をやった……その刹那。背中を戦慄が駆け抜けていく。

 まさか……でも、この打ち方はそうとしか思えない。台と平行にではなく、ほぼ垂直に構えられたキュー。テーブルの端に少しだけ腰を預け、群は右斜め後ろを向く格好で7番を狙った。

 回転がかかり、テニスの“ポール回し”のように半円を描く手球。計算されたように正確な動きをしたそれは、またもや標的をポケットインさせた。
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