bajo la luz de la luna
 2セット目は、コイントスで先攻・後攻を決めることになった。バンキングという方法もあるらしいのだけど、説明するのが面倒なのか、群はすぐにポケットに手を突っ込んだのだった。

 キラリと光る白金(しろがね)が宙返りし、群の右手で覆われて左手の甲へ落ちる。そして、棕櫚の目がゆっくりとこちらを向いた。



『どっちだ?』

『……表よ。』

『じゃあ、俺は裏だ。』



 いつもアタシを優しく撫でる手がのけられると、現れたのはレオナルド・ダヴィンチの『理想的な人体図』。この男は、どうやら直感にも恵まれているようだ。尊敬されることも多いが憎まれることも多い彼には、アタシもたまによく分からない感情を抱(いだ)いてしまう。

 憧れと嫉妬の狭間、とでも言うべきだろうか。恋人でもありライバルでもある相手は不敵に笑い、紅色の唇を薄く開いた。



『後攻。』

『……あら、まだ余裕ぶるつもり?』

『いや、そうじゃねぇ。ブレイクショットはお前の方が上手いからな。』



 本当なの、と尋ねそうになったけれど口を閉じる。ここで言い争っても時間の無駄。アタシはこの男の魂胆が実現しないように努めるのみ、なのだから。
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