bajo la luz de la luna
 1から順に、的確な軌道を描く手球でカラーボールを仕留めていく群。まさに一人試合。これは、日本(ハポン)で年末年始に放送されるという「かくし芸大会」か。そんな考えさえ頭をよぎった。



『ボス!良いぞーっ!!』

『何かスゲー技見せてくれよ!』

『おっ、良いねぇ。やっちまえよボス!』



 部下達に催促され、群は面倒臭そうな視線で彼らを一瞥した。小さく溜め息をつき、キューを下ろす群。彼はエンゾさんを手招きで呼び、何やら指示を出した。エンゾさんは『はいはい、かしこまりました』と微笑して、一旦部屋を出ていく。戻ってきた彼の手には、“350ミリリットルのビールの空き缶”が握られていた。



『ローサの皆さん、良いですか?私がこれから、9番の前に“これ”を置きます。要するに、ボスは手球をジャンプさせて9番に当てるつもりなんですね。上手くいったら拍手をお願いします。』

『おい、成功する可能性が低いみてぇな言い方じゃねぇか。言っとくが、外さねぇぞ?』



 自信たっぷりに言った群がキューを構える。みんなの視線を集めた彼が一撃を放つと、白い球は放物線を描いて缶を飛び越え、9番を鮮やかにポケットへ押しやった。
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