bajo la luz de la luna

『センスの良い娘さんね。是非ウチの秘書にも選んでやって欲しいものだわ。』

『……悪かったですね、センスがなくて。』

『そうは言ってないわ。アンタがいつも同じような格好だから、たまには変化を加えてみたらどうかって提案しているだけよ。』



　アタシ達のやり取りを聞いた群が、小さく吹き出した。『お前ら“夫婦漫才”みてぇだぞ』という彼の台詞に、ガルシアが『この方の夫だなんて御免です』と冷めた表情で返す。安心しなさいよ、アタシもアンタの妻になるなんて御免だから。



『ガルシア、機嫌直せよ。未来の言葉に刺があるのは元からじゃねぇか。
いちいち腹立ててたら疲れるぜ？お前の方が長く一緒に居るんだから、“軽く流す”ってことくらい覚えろよ。』

『……それもそうですね。勉強になりました。』

『ちょっとアンタ達。遠回しにアタシを馬鹿にしてない？』



　眉を寄せて口にすれば、『俺は事実を述べたまでだ』と不敵に笑う我が婚約者。大体、群がそう感じるのは文化の違いからだろうに。日本は直接的な言葉を避け、言いたいこと全てを口にする訳ではない“沈黙の文化”だと母に聞いた。きっとアタシには、一生馴染まない言葉になるのだろう。