bajo la luz de la luna
『お前さんら、ちょっと帰るのを待ってくれんか?』



 アタシ達のテーブルに歩み寄ってきたモンテさんを見て、みんなが首を傾げた。彼が大事そうに運んできてくれたアタシからの“プレゼント”に、群の目が留まる。



『メニューにはないんだが、群の誕生日ってことで特別だぞ!姪が日本通でな、運良く材料が揃ってたんだ。
さぁ群、食え!これの代金は取らねぇ。お前の隣に座ってる美人な嬢ちゃんから誕生日プレゼントだとよ。』



 お茶目なウインクが一つ、アタシに向けられる。微笑を返して軽く会釈をし、アタシは人の顔をまじまじと見つめてくる婚約者に視線を向けた。



「抹茶のティラミス、気に入らなかった?」

「いや……好物だ。まさかこんなサプライズがあるとは思わなかったから、ちょっと驚いた。」



 抑えたように笑って日本語で言いながら、群は小さなスプーンを手に取った。濃いグリーンとクリーム色、ブラウンのトリコロールが、もうすぐ終わる秋を連想させる。

 柔らかくなってきた日差しに、群の手の中で銀色がキラリと光る。深緑のパウダーがかかった一掬いが、ゆっくりと、彼の口に吸い込まれていった。
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