bajo la luz de la luna
「……ウマイ。抹茶の苦さとクリームの甘味が絶妙だ。」



 満足げな顔をして群は、モンテさんに『ありがとな』と言う。『お安いご用さ!』と返した彼に微笑して、群は再びアタシに向き直る。



「……未来、お前もありがとな。一口要るか?」

「結構よ。アタシ、抹茶とかゴーヤとか、苦いものは好きではないの。」

「へぇー……じゃあ、俺とのキスも嫌いか。」



 右手で頬杖をついて目を細め、何かを試すように言われる。そういえば、この男は煙草を吸っていた。今ここでこんな台詞を口にする彼は、色んな意味でズルいと思う。だって、彼とアタシくらいしか理解が出来ない日本語で、アタシが答えたくないのを知っていて、きっとそう言ったのだから。



「……アナタと結婚することになるのかと思うと、先が思いやられるわ。」

「何処がだ?俺には楽しい場面しか浮かんでこねぇぞ。」

「アナタは、ね。」



 皮肉を込めてそう呟いたら、群はふわりと笑んで、アタシの頭にそっと手を置いてきた。群は、“皮肉の裏”をしっかりと読んでいるのだ。彼がまだ見ぬ日々を「楽しい」と言ったのを、アタシが嬉しいと感じたことを。
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