bajo la luz de la luna
 月光に照らされた姿がやけに妖艶で、初めての夜を思い出す。左胸の臓器が、不意に一際大きく高鳴った。すると群が、まるでその音を聞いたかのようにこちらを向いた。



「……もしかして、俺と同じこと考えてるか?」

「何、が?」

「あの時も確か、満月だったな。俺がお前を初めて抱いた夜に似てる。
……情けないが、今少しだけ、離れるのが辛くなったな。」



 哀を含んだ笑みを浮かべて、群が言う。あぁ、彼も同じことを考えていたんだ。微笑を返して、飴色の髪を優しく撫でる。だけど、これだけではきっと伝わらない。



「……アタシも同じよ。そういえばあの時以来、取り乱したアナタを見ていないわね。」

「よせよ、もう忘れてくれ。」



 自嘲するように笑った唇が、スローで近付いてくる。忘れろと言われたけど、アタシは忘れたくない。あの日があったから、アタシ達はこんな風に、お互いを大切に思えるようになったのだから。



「……無理ね。」



 紅色の唇が直前で止まる。それは緩やかに、優しく弧を描く。次いで、棕櫚の瞳がそっと細まった。



「……未来なら、そう言うと思った。」
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