bajo la luz de la luna
 ――翌日。アタシ達ローサ一行は、チェーロの人々に見送られながらイタリアを発った。二日間の、そして、別れ際の出来事を機内で思い返す。群に抱き締められた時のぬくもりは、まだ微かに残っているようだ。



『ボス、まだ群さんが心配なのか?』



 長く綺麗な銀髪を結び終え、グレイが言う。そういう訳ではないと返したら、『なら良いんだけどよ』との言葉。心配でないと言えば嘘になるけれど、今アタシの心の大半を占めているのは“別の感情”なのだ。



『グレイ、女心が分かってないわねぇ……』



 ボソリと呟いたソニア。隣へ座る彼女は、そっとアタシに耳打ちしてくる。



『……もう二、三日居ても良かったのに。ボスは自分に厳しいわねぇ。』



 女の勘とやらは、やはり凄い。思わず、フッと微笑が洩れた。



『そうね……でも、ボスとしてはまだまだだわ。人としてもね。』



 だから、群やみんなの支えが必要なの。そう答えたら、『私達がついてるわ』と頼もしい返事が返ってきた。

 雲を突き抜けて空を泳ぐジェット機の中、アタシは心の奥で改めて呟いた。“群、フェリス・クンプレアニョス(誕生日おめでとう)”、と。
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