bajo la luz de la luna
 他のファミリーはどうだか知らないが、我がローサファミリーは、特に一つ前の代からスペインの治安維持に貢献しているらしい。アタシが先程虫けら達の犯罪未遂を指摘したのはそのせいだ。

 麻薬や人身の売買を摘発するのは勿論のこと、小さいながらも近年頻繁に起こっている中小マフィア間の抗争を沈めるのも、アタシ達大規模マフィアの役目だ。マフィアは日本の縦社会の如く上下関係が軸となっているから、上の言うことにマフィア達は敏感なのだ。

 その一方で実力を存分に発揮し、上のファミリーを倒してのし上がっていく“下剋上”があっても良い。ウチと同盟を組んでいる、ドイツのシュヴァルベファミリーなんかがその例だ。彼らは十年程かけて大きくなったというしたたかさを持っている。弱きが強きに従う。これがマフィア界のルールなのだ。



『それにしても、アタシを見ても誰だか分からない人って居るのね。』

『そりゃそうさ!一般人は名前だけ耳に入るくらいが精一杯だ。どうせ紋章見た瞬間にチビったんだろ?』

『グレイ、下品よ。そういう話は屋敷の中だけにして。』



 ピシャリと言えば、グレイは首をすくめて『ごめんよボス』とおどけてみせた。
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