bajo la luz de la luna
『……こんなことで悩んでいる場合じゃ、ないわよね……』



 今すべきことは敵・ソルファミリーの真意を掴むこと、それから奴らとの立場をはっきりさせること。煙(ウモ)のような婚約者との距離を嘆いている時間は、残念ながらないのだ。

 フランシスコは、一体何を考えているのだろう。何故、このタイミングでアタシ達の前に現れたのだろう。ローサを、というより、彼の家族が死んだ当時に指揮をしていた父のことを恨み、我がファミリーを根絶やしにしたいと思っているには違いないと思うのだけど。



『パパは時期がまだだと言って話してくれなかったし、本人に直接聞くしかないのね。アイツが素直に話し合いをするとは思えないけど……』



 ボスって大変なのね……こんなことを何十年も続けてきた父親には、本当に頭が上がらない。あの人が殺気を放つ姿を前にしたら、どんな強者もその尋常でないオーラに背筋を凍らせるだろう。

 ――胸の奥がざわついている。直感が、もうすぐ何か大きなことが起こると告げたのだ。頭上の満ちていく月は、段々と騒がしくなるであろう下界を、いつもと変わることなく穏やかに照らしていた。
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