bajo la luz de la luna
 腹立たしい単語が聞こえ、眉間に皺が寄る。それを見たアイツは愉しそうに、憎たらしい笑みを向けた。



『……父の何処が能天気だというの。』

『だってそうだろう?呑気に旅行中らしいじゃないか。まったく、僕には理解出来ないな!』



 高らかに笑うソイツの喉元を切り裂いてしまいたくなった。すると、殺気を帯びた視線を交わらせるアタシとアイツの間に、別の気配が割り込んでくる。



『未来、よせ。フランシスコの挑発に乗るんじゃねぇ。』



 アタシを隠すように目の前に立った、コントラバスのトーンの持ち主。その広い背中からは、本当に僅かだが苛立ちが窺える。ほぼ完璧に隠してしまっているのだから、彼は凄い。今のアタシには無理な話だ。



『マフィアのボスは裁判官と似てるんだ。絶対に、感情をさらけ出しちゃいけねぇ。見くびられる上に、状況に応じた適切な判断が出来なくなるぞ。』



 アタシに言ったのかフランシスコに言ったのか、はたまた自分自身に言ったのかは分からない。とにかく群はそう言って、アタシと奴の仲裁に入ろうとしたのだ。
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