bajo la luz de la luna

『群と話してると、お兄ちゃんが出来たみたいで、凄く楽しかったよ。ずっと、未来の側に居てあげてね……？』

『……あぁ、俺も楽しかったぜ。未来のことは心配するな。』



　群は穏やかな、イリスからすれば彼女がお気に入りの日溜まり色をしたブランケットのような声で言って、小さな頭をふわりと撫でた。瞬間、イリスがしぼみかけの花の如く笑う。それを見たら、言いようのない震えが背中を襲った。

　冬風が、素知らぬ顔で通り過ぎていく。消えそうな“虹”は、最後にアタシをその瞳に映した。



『未来……本当に、ありがとう。他に何を言ったら良いのか、分からない。
……私、ね？未来と群の結婚式に行けたらなって、思ってたの。多分、もう叶わないよね……それだけが、凄く残念だな……』



　息も絶え絶えに言って苦しげに笑った彼女の脳裏には、いつか訪れるであろう日の光景が浮かんでいるのだろうか。こんなことが起こらなければ、アタシと群を祝福する彼女の笑顔は、この先の日々に必ずあったのに。

　職業柄色々な人間を見てきたから、彼女がもう長くないことは勘で分かる。だけど、受け入れたくない。そんなミライなら、来なくて良い。