bajo la luz de la luna

「……未来。お前、熱あるんじゃないか？」

「え……？」



　シンプルな指輪がよく似合いそうな細長い指を持つ手が、アタシの額に宛がわれる。瞬間、群の眉が益々不機嫌そうに歪んだ。



「……やっぱりな。」



　棕櫚の目が、傍らでずっと黙っていた秘書を映す。その視線は、戦闘中のものに匹敵する程の威圧感を持っていた。直後、苛立ちを纏った重低音でスペイン語が響く。



『お前、主人の体調の変化には真っ先に気付けと教えられなかったのか？ずっと未来に付いてたんだろうが。』

『群、やめて。アタシ、アナタに言われるまで気付かなかったの。自己管理が出来ない自分の責任だわ。』

『確かに、自己管理力が足りなかったお前も問題だがな。俺より長くお前と過ごしてるのに、変化に気付けなかったこいつにも問題あるだろ。』



　群の視線は明らかにガルシアを咎めるものだ。ガルシアはといえば、それに耐えるかのように固く唇を噛み締めている。彼のせいでは、ないのに。



『ガルシア、アタシのせいよ。だから気にしないで。』

『お嬢様……』



　苦々しい顔をして俯いたガルシア。それを見た群は、尚も彼を責める言葉を吐き続けた。