bajo la luz de la luna
『……黙ってて、平気なのか?俺だったら、言ってスッキリするけどな。』



 急に優しい声音になった群。その声を聞いても、ガルシアはいっこうに何も話さない。



『お前には、悪いと思ってんだ。急に横から出てきて奪っちまったようなもんだから、恨まれても仕方ねぇと思ってる。
……だから、言ってくれよ。未来を、愛してるんだろ?』



 無愛想な声は、やはり聞こえない。そうしたら、呆れたような群の言葉が耳に入ってくる。



『首だけ動かしてどうするんだよ。言葉にしないと聞こえねぇぞ。』

『……言ったってどうにもなりませんよ。お嬢様はいつか、あなたとご結婚されるのですからね。』



 ――それは、とても悲しげな響きでアタシの耳に届いた。いつも何処か反抗期な態度だった彼の切なる思いを初めて認識すると同時に、群の密かな優しさに気付く。群は、ガルシアがアタシと顔を合わさずに自分の気持ちを伝えられるように、ドアの中と外の距離を取らせたのだ、と。



『……良いんですよ、わたくしのことは。あなたなら、お嬢様を大切にしてくれると分かりきっていますから。だから、任せるんです。それではいけませんか?』
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